呼吸器内科

呼吸器内科

特色

当院の呼吸器内科は、呼吸器疾患全般を対象に診断と治療を行っていますが、特に結核専用の病室、ベッドを備えていることが特徴です。結核の患者数は近年減少傾向にありますが、いまだに重要な呼吸器感染症でしばしば隔離が必要です。また、肺非結核抗酸菌症、肺化膿症{あるいは肺膿瘍}、肺癌)、間質性肺炎などでも、レントゲンやCT検査で結核と区別が難しいことがあります。このような結核と良く似た病気を疑って、もし結核であっても、あるいは結核を合併していても、すぐに施設内にある結核病棟で対応できるため、安心して検査や治療を進める事ができます。
また、一般に間質性肺疾患と呼ばれる間質性肺炎、肺線維症には、特発性間質性肺炎、リウマチ・膠原病など200以上のよく似た疾患が含まれ、治療法も経過も異なり、多くの疾患は厚生労働省の指定難病に指定されています。当院では間質性肺炎の専門の先生、リウマチ・膠原病の専門の医師が連携して診療しています。またリンパ脈管筋腫症、肺胞蛋白症、肺ランゲルハンス細胞組織球症などの稀少疾患の診療も行っています。
また、肺の病気は進行すると、息が苦しくなる、呼吸不全と言う状態になりますが、在宅酸素療法(HOT、LTOT)、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)、ネーザルハイフロー、を適切に行い、必要な場合入院および外来で呼吸リハビリテーションを行い、理学療法士や作業療法士、看護師、栄養士、訪問看護部門と連携しながら個々の患者様にあった呼吸管理を行っています。また近年注目されている、睡眠時無呼吸症候群の患者様には持続陽圧呼吸療法(CPAP)、なども行っています。更に、必要な患者さんには肺移植を実施している大学病院と連携しながら肺移植の相談も行っています。

主な対象疾患

結核

結核は、抗酸菌に属する結核菌により主に肺に炎症を引き起こす病気です。感染力のある患者さんが咳をして空気中に飛び散った結核菌を吸い込んだ人の一部が感染し更に発病します。結核は全身の臓器に病気をつくりますが、骨にできた結核がカリエス、胸膜に結核ができて水がたまるのが結核性胸膜炎です。当院は陰圧管理されている結核病棟を有しており、感染力のある患者さんは必要に応じて入院加療を行っています。また発病していない感染の状態で見つかった場合は発病を予防する薬で発病を予防します。

その他の呼吸器感染症

呼吸器系の病気で死亡率のトップは誤嚥性肺炎を含む呼吸器感染症です。
また感染症の種類によっては法律的に管理の方法が厳密に決められています。
非結核性抗酸菌症、肺真菌症(アスペルギルス、カンジダ等)一般的な肺炎(市中肺炎、院内肺炎等)、ウイルス肺炎は適格に診断を行い治療を行っています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は息切れと、長く続く咳と痰を特徴とする病気で、多くの場合タバコが原因、中年以降に症状が出てきます。まれに有毒なガスや小児期の呼吸器感染症でもこの病気を引き起こすことがあります。慢性気管支炎、あるいは肺気腫という病名もまとめてCOPD と考えられています。禁煙が基本ですが、現在多くの薬剤が開発されていますが、徐々に進行し酸素療法や呼吸リハビリテーションが必要になります。

気管支喘息

気管支喘息は、気管支などの空気が通る気道が慢性に炎症と言う状態になっており、気道狭窄や咳の悪化や軽快をきたし、ゼーゼー言いながら咳や痰、呼吸困難をくりかえす病気です。近年有効な薬剤開発と管理が良くなり、喘息によって死亡する人は、減少傾向ですが、厚生労働省人口動態統計によると、2016年は年間1511人死亡していました。最近死亡率が減少してきた背景としては吸入ステロイドの普及があります。
十分な治療を継続することが重要です。

間質性肺疾患

間質性肺疾患(あるいは間質性肺炎、肺線維症とも呼ばれます)と呼んでいる疾患には原因不明(特発性間質性肺炎)や原因のあるもの(関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、膠原病、じん肺、サルコイドーシス)など、200以上の疾患が含まれます。特発性間質性肺炎は特発性肺線維症を含む更に細かく分類されます。それぞれの疾患は治療法や経過が異なり、その診断は重要です。軽快する「病気もありますが、多くの場合ゆっくりと線維化が進行しますが、時に急に増悪したり(急性増悪)、肺がんを合併する事もあります。また最近は標準的治療にも関わらず線維化が進行する状態を進行性肺線維症と呼び必要に応じて抗線維化薬が投与されます。健康診断で発見された場合など、現在、無症状でも、経過観察、筆世に応じて治療が必要です。また多くの疾患は厚生労働省の難病に指定され基準を満たせば医療費の補助も得られます。

肺がん

肺がんの治療は、病期と組織型(非小細胞肺がん、小細胞肺がん)により治療が異なります。非小細胞肺がんであれば、がんの遺伝子変異(がんに対して効果のある分子標的薬があるかどうかを調べます)やPD-L1の発現(免疫チェックポイント阻害剤というお薬が効果を調べます)などを調べた結果で治療が決まります。(肺がんと診断された患者さんは、がん情報サービスのホームページ等で詳しい情報を得られます)。肺がんの検査に加えて、年齢、全身状態、基礎疾患や合併症の状態によって、適切な治療を選択することになります。その上で患者さんご自身の意思決定があって、治療を選択し開始することになります。肺がんの薬物療法は、さまざまな副作用があります。もともとの体調や基礎疾患の状態がよくないと治療ができない場合もあります。日ごろから体調管理に気を付けることは大切です。現在健康と思われていても、定期的に健康診断を受けましょう。基礎疾患があれば、定期的に通院して、できるだけコントロールのいい状態に保っておくことが大切です。当院では、肺がんの薬物療法をおこなっています。薬物療法は、最初の導入治療は入院で行いますが、その後は、ほとんどの場合、長期間の通院治療が必要になります。特に、分子標的薬による治療は通院が長くなりますので、地域のお近くの病院で治療を受けられることは患者さんにとってメリットが大きいと考えられます。地域の患者様がご自身の生活を大切にしながら適切な治療を行えるように努めています。がんの治療は、がんの診断の時から緩和治療がベースにあり、そのうえで薬物療法を行っていくことになります。がん性疼痛看護認定看護師もサポートをおこない、ソーシャルワーカーも必要に応じて介護サービスの導入の手助け等を行いながら、必要な治療が受けることができるようにサポートしています。患者様の病状によっては、放射線治療が必要な場合、高度の医療が必要な場合や治験薬による治療で予後の改善が期待できる場合等は、必要に応じて高次医療機関へご紹介させていただきます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する病気です。この病気の方は、

1.周囲の方からいびきを指摘される
2.夜間の睡眠中によく目が覚める(息苦しくなって目覚めることもあります)
3.起床時の頭痛や体のだるい感じ
4.日中の眠気などを経験します。

睡眠時無呼吸症候群には、睡眠中に口や鼻から声帯までの空気の通り道が狭くなったり(閉塞型)、呼吸を調整する脳の働きが低下するために発生する場合(中枢型)、これら両方が関係する混合型に分けられます。閉塞型睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつは肥満です。また骨格の形態やのどの奥の形でも無呼吸の原因となります。飲酒や睡眠剤によって無呼吸が増悪することがあります。高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの虚血性肺疾患の発生を増加させ、糖尿病,高脂血症もしばしば合併し、時に突然死される患者さんもおられます。また昼間眠気がありいろいろな事故につながるとも言われています。簡易検査(アプノモニター)と脳波を含めた精密検査(ポリソムノグラフィー;PSG)で診断し、経鼻的気道持続陽圧療法(CPAP療法)、手術や口腔内装具による治療が行われます(当院ではCPAPまで)。

難治性稀少肺疾患
  (リンパ脈管筋腫症、肺胞蛋白症、肺ランゲルハンス細胞組織球症等)

リンパ脈管筋腫症(LAM)は妊娠可能な年齢の女性に起こることが多く、腫瘍性のLAM細胞が原因になり、肺に多数の穴(のう胞)や腎臓やリンパ節に腫瘍を認める稀な病気です。呼吸困難、咳、血痰、気胸(肺に穴があいて、しぼんでしまうこと)(当院呼吸器外科にて説明)、乳糜胸水、腎臓や肝臓に血管筋脂肪腫という良性の腫瘍、リンパ管に沿ってリンパ脈管筋腫という腫瘍、足のむくみ(リンパ浮腫)などが起こります。シロリムスと言う薬剤が有効ですが、進行性の病気で、基準を満たせば肺移植が行われる事もあります。

肺胞蛋白症(PAP)は肺胞に蛋白様物質(サーファクタント蛋白や脂質等)がたまり、呼吸困難にいたる希な病気です。血液中の抗GM-CSF抗体の測定、各種検査で。自己免疫性肺胞蛋白症、続発性肺胞蛋白症、先天性/遺伝性肺胞蛋白症、未分類肺胞蛋白症に分類されますが成人の多くは自己免疫性肺胞蛋白症です。全身麻酔下の全肺洗浄、気管支鏡による区域洗浄、GM-CSF吸入療法(試験的)が行われています。

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は、骨、肺、肝臓など全身の臓器へ局所性またはびまん性にLCH細胞が浸潤する増殖性疾患です。成人では肺病変が主で喫煙との関連が示唆されています。成人の肺LCHでは禁煙で軽快する事がありますが、肺外病変にはしばしば化学療法が必要になり血液内科と連携して治療にあたります。

急性呼吸不全、慢性呼吸不全

空気中の酸素を取り入れて、体の中で生じた二酸化炭素を排出することを呼吸と呼び肺の重要な機能です。そして、何らかの理由で動脈血酸素分圧(PaO2)が60 mmHg (あるいはTorr)以下の状態を呼吸不全といいます。また二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合(45mmHg以下)をI型呼吸不全、45mmHgをこえる場合をII型呼吸不全と呼び、このような呼吸不全が比較的短い期間で急速に起こってきた場合急性呼吸不全、1か月以上続く状態を慢性呼吸不全と呼びます。慢性呼吸不全を引き起こす肺の病気には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺線維症、肺がん、更に神経や筋肉の病気があります。慢性呼吸不全は、在宅酸素療法、人工呼吸、呼吸リハビリテーションで治療しますが、原因となっている病気の治療が必要です。

肺高血圧症、右心不全

肺動脈は、全身から心臓へ帰ってきた酸素の少ない血液を心臓から肺へ送る血管です。肺動脈の血圧が高い状態を肺高血圧症と呼び、一般に高血圧と呼ばれる状態とは異なります。肺高血圧症は、肺動脈性、心臓(左心)の病気、肺の病気、低酸素血症、慢性血栓塞栓症、詳細不明などでおこりますが、その中の一部は厚生労働省の難病に指定されています。肺高血圧症になると、疲労感、労作時の呼吸困難、動機、胸の痛み、失神を来たし、右心不全の状態になると、手足がむくんだり(浮腫)、肝臓が腫れたり、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したりします。肺高血圧が持続し進行すると、心臓に負担がかかり、心臓の機能が低下、全身の血液の流れに障害がでてうっ滞する状態となり右心不全と呼ばれます。利尿剤、酸素療法、特異的な肺高血圧の治療など、原因、分類に応じて治療が行われます。

実施可能な検査

通常のCTに加えて高分解能CT(放射線科の専門医が画像所見)を実施。肺野異常陰影の精密検査としての気管支鏡検査全般に加えて、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)により気管支周囲のリンパ節の病巣を調べています。気管支鏡実施時には迅速病理細胞診を行っています。精密呼吸機能検査、6分間歩行検査、動脈血液ガス検査も実施ししております。気管支喘息の診断のための気道可逆性試験や呼気一酸化窒素濃度測定を行っています。右心不全や肺高血圧の診断のため超音波エコー検査も実施しています。睡眠時無呼吸症候群に対する外来での簡易検査、入院して実施する終夜ポリグラフ検査も随時行っています。新型コロナ、インフルエンザ等の抗原検査、PCR検査、喀痰の抗酸菌、細菌検査も実施しております。

実施している治療

肺がんに対する抗がん剤治療を行っています。慢性呼吸器疾患で在宅酸素療法が必要な患者さんの診療を行っており、呼吸管理として気管挿管(気管切開)による人工呼吸、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)、ネーザルハイフローなどの機械の管理を行うこともできます。睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療も積極的に行っています。

その他

身体障害の呼吸機能障害、指定難病等に必要な主な検査、書類作成を行っています。
主な呼吸器疾患のセカンドオピニオンも実施しています(事前にお問い合わせください)。

患者さんへ

呼吸器の病気で多い症状としては、発熱、咳、痰、息切れなどがあげられます。また、症状がなくても健診の胸部レントゲン写真で異常を指摘されて心配されている方もおられるかもしれません。しかし、これらの症状やレントゲン異常だけで病気の診断をつけることは難しく、専門医を受診して適切な検査を受けたうえで治療方針を決めていくことが重要です。このようなことでお困りの方は気軽に当院呼吸器内科までご相談ください。

ご紹介いただく先生に

当院は大阪と京都地区の間で結核病棟を有し呼吸器疾患全般の診療も行っております。結核に関しては、確定診断がついた患者さんはもちろんのこと、まだ確定診断がついていない疑いの状況でもご紹介ください。気管支鏡検査、精密呼吸機能、運動負荷検査(6分間歩行検査等)CTやMRI検査による精査が必要な患者さんや間質性肺炎を疑う患者さんも連携しながら診療を行っていますのでご紹介ください。

担当医紹介

役職 氏名 学会認定、資格等
総 長 小牟田 清 日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会認定指導医
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
副院長
診療部長
内科部長
健診部長
松本 智成 日本内科学会認定内科医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本感染症学会認定指導医
日本結核・非結核性抗酸菌症学会認定指導医
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本呼吸器学会認定指導医
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医
日本リウマチ学会認定リウマチ指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本アレルギー学会認定指導医
日本医師会認定産業医
ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター
身体障害者福祉法第15条指定医(免疫疾患)
身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器疾患)
臨床研修指導医講習会終了
緩和ケア研修会-PEACEプロジェクト大阪 2015終了
医 員 木村 裕美
医 員 天久 康絢 日本内科学会認定内科医/総合内科専門医
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本結核・非結核抗酸菌症学会 結核・抗酸菌症認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本呼吸器学会インフェクションコントロールドクター
医 員 酒井 俊輔 日本内科学会認定内科医
日本化学療法学会認定抗菌化学療法認定医
日本医師会認定産業医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター
大阪府難病指定医
日本静脈経腸栄養学会TNTコース修了
市立室蘭総合病院緩和ケア研修会終了
レジデント 伊藤 大貴
顧 問 井上 義一 日本呼吸器学会専門医および指導医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医および指導医
日本結核非結核性抗酸菌症学会結核抗酸菌症認定医および指導医
日本循環器学会循環器専門医
日本内科学会認定内科医
身体障害者指定医・難病指定医
The Best Doctors in Japan 2022-2023
非常勤医師 勝島 詩恵 日本内科学会総合内科専門医/指導医
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医/指導医
緩和ケア研修終了

外来担当表

午前 小牟田 松 本 小牟田 木 村
松 本 天 久 酒 井 天 久
井 上 伊 藤 伊 藤
午後 松 本 松 本 小牟田 松 本 酒 井
井 上 勝 島 井 上
勝 島